『虐待父がようやく死んだ』読了
「こんな家族が実在するなんて信じられない」。そう思える人が羨ましくもあり、嫌いでもあります。
外面はパーフェクトで誰もが羨む人格者、しかし家では妻子に暴力を振るう上に実の娘を強姦しようとした父親。
子供の為に自己を犠牲にしていると思われたが、実際は子供を犠牲にしてでも父親と居たかっただけで、更に娘に嫉妬心まで持っていた母親。
ここまで酷い家庭は少ない事を願いますが、多分一般的な家庭で育った人達が思うよりは多く存在しているでしょう。
私の家もここまでではありませんでしたし、虐待の加害者は母親だったので性的な悪戯こそあれど本当の貞操の危機はありませんでしたが、思い当たる事が多々あります。
暴力を振るう側の親と、耐える側の親。子供の為、もしくは経済的自立等の問題から離婚出来ないケースも多くあるでしょう。
しかしモラハラ(昔は暴力もあった)を受け続けていた私の父親も、著者の母親同様暴力的で威圧的な配偶者を愛していたから離れなかっただけでした。
虐待の連鎖というのも同じで、それに対する「辛い幼少期を過ごそうが、そんな事は被害者たる子供に関係が無い!!」という怒りもまったく同意見です。
『昔辛かったことを理由に通り魔』、とかだと完全に加害者が叩かれるのに、それが親子に置き換わると途端に「親も辛かったんだ、許しなさい」とか綺麗事を言う人がそこそこ出てくるのか不思議で仕方ありません。
基本的にはコミックエッセイらしいシンプルな絵柄ですが、激情を独白するシーン等は恐ろしくなる程勢いがあり、生々しい感情を紙面全てで叫んでいるようです。
読むのが辛くなるような虐待は本作のメインテーマではないのでしょう。
本作が最も伝えようとしてくれているのは、恐らくその後の気付き・虐待の記憶から立ち直ろうとするもがき・幸せな家庭を築き維持する事……そういった、『虐待を受けた人達が幸せになる為の情報の一つ』。
実際、共感する所や気付かされる事が多数ありました。
著者は、一時危うくなりながらも、我が子に手を上げる前に起動修正して温かい家庭を築いておられます。
彼女が世に出してくださった経験談から学び、私も私の人生を生きたいと思います。